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カープのなかでもっとも優勝を願う男 
野村謙二郎が聞いた黒田博樹の言葉

25年ぶりの優勝へ。カープの思いを背負う男たちの言葉。

■黒田博樹が口にしたもっとも叶えたかった思い

 野村氏との食事の際、日本球界復帰への悩みを打ち明けた黒田。その後、2014年12月21日、復帰発表の6日前に野村氏の携帯電話に黒田からの着信が入った。

「『どうしたんだ?』と尋ねると、想像もつかない言葉が飛び出した。『野村さん、(あるメジャー球団からの)オファーの返事、1日延ばしてもらったんですけど、あと1時間で返さなきゃいけないんです……』『お前は、どうしたいんだ?』『いや、どうしたらいいんですかねぇ……』電話の向こうでは苦悩するクロの声があった。彼はもしかしたら僕に背中を押してほしかったのかもしれない」

 黒田は決断を最後まで悩み、野村氏に意見を求めていた。そして野村氏はこう答えた。

「俺はもちろん帰ってきてほしいけど、これはお前の人生だ。お前がもしカープでやると言ってくれたら鬼に金棒だし、広島の街もすごく盛り上がる。ただ、家族のこともあるし、お金のこともある。最後は後悔しないように、お前自身が決めろ」

 黒田は「ありがとうございました」と言って、会話は終わった。そして12月27日、黒田のカープ復帰が発表された。広島、日本中が黒田フィーバーに沸いたことは承知の通りだろう。

広島だけでなく日本中に驚きを与えた黒田博樹の広島復帰。

 12月10日、黒田との食事の際に野村氏が感銘を受けた黒田の言葉がある。

「向こうに行ってもずっとカープの動向は追っていました。今、カープは優勝を狙えるチームになったし、僕はもうそれほど野球人生が長いわけではないんです。だから……最後はカープで優勝したい」

 8年ぶりにカープに復帰した昨季、黒田は11勝と奮闘したもののチームは4位と低迷。オフにはその去就に注目が集まったが、翌年の現役続行を決めた。今季、自身の大記録よりも常にチームの優勝を口にし続ける黒田。彼のカープ愛は誰よりも深いーー。

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